ピーナツと薪とコンポートの共通項

今日したこと。

朝ひと段落してから去年畑で採れた(その後 Kiko が洗って干してローストしてくれた)落花生の殻むき作業。

全然進まないので Kiko にヘルプ依頼、2人で作業。

ご近所さんが石窯を使わせてくださるというありがたいお申し出。試し焼きをこれからしようと急に話がまとまる。

2人でお邪魔し、石窯が使える状態になるまで、ご近所さんの指導のもと薪をくべる。初めてだったので勝手が分からず、3時間ほどかかる。

帰宅してお昼寝。

起きて再び落花生の殻むき。

夕食後 Kiko はキズものでお買い得に分けてもらったネクタリンのコンポートづくり。わたしは残りの落花生の殻むき。スーパーの買い物袋一杯あった落花生、むいたら正味400グラムでした。

生産性、効率という目で見たら全く割りに合わない作業です。石窯もそう。使えるようになるまで3時間って!オーブンならボタンひとつですぐ使えます。ピーナツもスーパーで買ってくればいい。コンポートだって、黄色い桃の缶詰買えばいいんです。

でも、今日丸一日(なんならここ1ヶ月ずっと)非生産的で非効率なことをやってみた本人の実感としては、なんだかとても豊かなんですよね。ゆったりどっしり落ち着いている。

思うにこういう作業をするとき、生産性や効率、経済的な指標では測れない何かが生まれているから、豊かな感じがするのでしょう。感じていることを言語化するのが難しいのですが、やってみます。自分の手を動かすのが好き、自然の恩恵(薪のこと)を使う、ごみが出ない(ピーナツの包装、桃の缶)、殻むきながら、窯に薪をくべながら会話する、全部のステップが目に見えるので安心(自分達でやってますからね)、単純においしい、など色々あげられますが、少なくともわたしにとっての大きな効果は、「力を取り戻せる感じがする」「感謝を思い出せる」ことかもしれません。

「力を取り戻せる感じがする」は、たとえば自分と家族の口に入り身体と心を養う食べ物を、スーパーで買う(人任せにする)のでなく自分の手で作る力。料理をするエネルギーを電力会社やガス会社から買う(これもある意味人任せ)のでなく、自然の恩恵薪から自分で作りだす力。そのプロセスひとつひとつ、納得できるものを自分で選ぶことから来る自己効力感も力です。

ちょっと脱線。今、脳内にある言葉では表現したい「力」を表せるものがなかったので、ちょっとググりました。「自己効力感」がヒットしました。ネット辞書によると、

何らかの課題に取り組むときに困難な状況であっても、「自分は対処できる」と自分に対して確信、自信といったイメージが持てること

 という意味だそう。近いです。でもちょっと違う。もっと根本的な「生きる力」みたいなものなのです。何かいい言葉、ないか。英語にありました。Self-empowerment です。自分の感じに近い定義を独断と偏見で引っ張ってきました。これです。

Self-empowerment means that you take charge of your own life. 

そう、自分の人生の舵を自分自身で取る力!わたしの反省ですが、日本で生まれ育ち身についた「当たり前」を疑わずにいると、いつの間にか舵を誰か他の人に任せることになりがちみたいです。何だろうな~、食べることから始まり、働き方、人生のレール、政治、ぜーんぶ。実際のわたしの今日の動きは、小さな小さなことです。ピーナツの殻むきをどんだけ広げるんだ、と言われたら、はいその通りですすみませんと言うしかないです。でもこんな小さな動きですら、わたしにとっては自分の人生の舵を取る力を取り戻す、小さな一歩になれるのです。なんかすごくないですか!

「感謝を思い出せる」は、正味400グラムのピーナツができるまでの時間と労力を知ることに尽きます。石窯3時間燃しもコンポートもそうだけど、一番はやっぱりピーナツです。外国産のピーナツ、安いです。国産のピーナツはお高い。お財布にイタいです。今ざくっと通販サイトを見たら、国産のと一番安いピーナツ(まあ海外産でしょう)の価格差は10倍でした。

安いピーナツ、どうやって栽培してるの(農薬とか)という疑問もさることながら、この値段で日本で売るために、産地の誰かにしわ寄せが行ってないかも気になります。もちろんきっと大規模ピーナツ農場で、農機や設備を使って栽培・加工しているのでしょう。でも、人の手でしかできない工程もあるんじゃない?その人達の工賃は?農家さんの手元に残るのは一体どれくらい?

国産ピーナツの値段に納得すると同時に、食べ物が食卓に上るまでのプロセスを知ると、生産者と料理を作ってくれる人はもちろん食べ物そのものにも感謝しないではいられません。ピーナツを育む土と太陽、雨にも感謝です。食べ物が目の前にあるのは当たり前じゃない、ありがたいことだと分かります。「いただきます」の言葉はきっとこういう思いから生まれたのですね。初めて言葉の意味が腹落ちしました。

ブログに再び感謝です。自分でも不思議でした、どうしてお金にもならず時間ばっかりかかる地味な作業をしてこんな風に満ち足りた気持ちになるのか。言葉にしようとすることで、分かりました。目には見えない。でもわたしにとって大事なことです。良かった。