小さな畑の小さな宇宙

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赤ちゃんオヒシバ。


こんにちは!「Fun 仕事への道」はちょっとお休みします。

なぜか。今日は雨の合間を縫って何日かぶりに畑に行ってきてヘロヘロだから…。それもありますが、畑で感じることがありまして、忘れないうちにそれを文字にしておきたいからです。

あの、畑と言いましても地主さんから借りている小さなスペースで、そうですね、30歩分ほどの長さの畝が4本ある程度です。伝わりづらい?とにかく、農家さんやちゃんと畑をされる人から見たらままごとみたいな規模とスキルで、去年から畑デビューしています。

畑に行って何をするかというと、いる時間の9割は、草むしるか刈ってます。ははは。ど素人ながら、除草剤はなんかやだ、プロ目指すわけでもないし好きなようにさせてもらおう、と農薬系は極力使っておりません。極力ですが。そうすると、草!草!草!雑草の生命力炸裂です。

短いつたない経験ながら、草に勝とうなんていう思い上がりは早々に捨てました。彼等は誰に世話されるでもないのに、先祖代々この土地で栄えてきたのです。根性が違います。全部抜いたと思っても、根が残っていればまた葉を出します。抜いたのを地面に放っておくと、また根を張ります。根こそぎ抜いてちゃんと捨てたと思っても、残された種が次の雨ですぐ芽を出して、つぶつぶした緑の芽がじゅうたん状態です。敵ながらあっぱれです。

草の量が多いときは、立ってできる「立鎌ホー」で地表を削る感じで草を取ります。今日はちょっと余裕があったのと雨で土も柔らかくなっていたので、しゃがんでのんびり手で抜きました。

しゃがむと目が地表から50センチくらいの高さになります。で、一度に視野に入るのはだいたい1メートル四方くらいでしょうか。この目線と広さが、わたしにはちょうどいいということが今日分かりました。地面の様子、匂い、動き回る虫達、草の様子、根っこと一緒に掘り返されるミミズや虫の卵、アリ達の姿がよく見えます。あんまり広々と見渡せてしまうと、抜いても抜いてもきりがない草むしりがただの苦行になるでしょう。でも1メーター四方なら、小さな世界を観察しながら、目の前の草に集中できます。

まだ畑新人なので、生き物のことも雑草のこともよく知らないのですが、今日ひとつ雑草を知りました。「オヒシバ」。草むしりを一度でもしたことがあれば、見覚えがあると思われるとてもよく見るイネ科の雑草です。つまり丈夫でやっつけにくい、人間にとっては厄介な雑草です。わたしもこれまで数えきれないくらい抜いたり取ったりしてきました。でも、花がきれいなわけでもなく地味な存在だったので、名前を知ろうともしませんでした。今日までは。

今日も、あ~またあのよく見る(やっかいな)やつだ、と思って草丈5センチくらいのオヒシバを抜きました。たまたまそのオヒシバはビニールマルチを押さえる土に生えており、根が地中深くに入っていなかったのでしょう、珍しく根っこがするすると茎にくっついて抜けてきます。そうしたら。5センチしかない赤ちゃんオヒシバなのに、根は30センチ以上も伸び、しかもそれくらいの長さの根が何本もあります。

…軽くショックでした。なぜでしょうね。これまで意識したこともなく、よくあるただの雑草としてポイポイ抜いてきた草の、生への執念を見せられた気がしました。わたしにとっては「草むしり」ですが、オヒシバにとっては命が終わるかどうかの真剣勝負です。命をつなぐため、本当は全部のオヒシバが、こうやって背丈の何倍もの根を張っているのでしょう。

見えないところで全力で根を張り生きようとするオヒシバは、なんちゃって農婦の襟を正させてくれました。具体的には、「雑草」とひとからげにせず、ひとつひとつまず知ろう、知ったうえで必要であれば敬意を持って命をもらおう。共生が可能であれば、そうしようと思いました。

畑にはオヒシバ以外にもたくさんの「雑草」が生えています。分かるだけでもスベリヒユ、シロザ、ハコベ…。それぞれの根は、地中でどうなっているんだろう。根は地中の生き物や土の質にどう関わっているんだろう。わたしに見えている世界はほんの一部で、地中にはその何倍ものわたしの知らない世界が広がっていそうです。地中の世界には植物、昆虫、モグラにミミズ、微生物のめくるめくドラマがきっとある!

畑の小さな宇宙のことを、地上も地下ももっと知りたくなりました。草むしり。いいです。